高市早苗首相の施政方針演説と裁量労働制見直し
― 社労士が経営者に伝えたい「アクセルとブレーキ」の経営視点
キーワードは、
「時間管理から健康管理へ」
「保護と引き換えの自律」
社労士として経営者の皆様にお伝えしたいのは、
これは単なる制度改正ではなく、“労務管理の思想転換”であるという点です。
裁量労働制見直しの本質
裁量労働制は、実労働時間ではなく「みなし時間」で評価する制度です。
現在は以下の2類型があります。
-
専門業務型(研究開発、弁護士、システムコンサル等)
-
企画業務型(本社中枢部門での企画・分析業務)
政府はこれを成長戦略の一環として位置づけています。
背景にある発想
✔ 労働時間でなく成果で評価
✔ デジタル時代に合った働き方
✔ テレワーク拡大
しかし、制度の本質は常に同じです。
「時間規制を緩める代わりに、健康確保責任を強化する」
ここを読み違えると、企業は大きなリスクを抱えます。
経営者が見落としがちな3つのリスク
① 長時間労働の可視化困難
裁量労働制は「管理しなくてよい制度」ではありません。
むしろ今後は、
-
実労働時間の把握
-
健康状態のモニタリング
-
休息確保措置
がより厳しく問われる可能性があります。
② 健康配慮義務の高度化
労働基準法違反よりも怖いのは、
安全配慮義務違反による民事責任です。
仮に今後改正された労基法の新基準を守っていたとしても、
労基法違反はなくとも、過労死ライン(月80時間相当)を超える状態の管理せず、健康配慮を怠り、健康面で事故が発生すれば、損害賠償額は数千万円規模になることもあります。「裁量だから自己責任」は通用しません。
③ 真の裁量があるか
業務量や納期を決めるのが会社側である限り、
それは「裁量」ではなく「委任された作業」です。
ここを整理しないまま導入すると、
紛争リスクは極めて高くなります。
今後の制度改正で予想される方向性
今後の議論では、次のような強化が想定されます。
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勤務間インターバル義務化
-
健康確保措置の厳格化
-
適用対象の再整理
-
同意取得手続の厳格化
-
データ保存義務の強化
つまり、
裁量を広げる代わりに、企業責任は重くなる
これが大前提です。
経営者が今すぐ準備すべき5つの対策
☑① 実労働時間の把握体制の再構築
テレワーク含め、ログ管理・PC稼働時間把握などの仕組みを整備。
この改善、DX化は、システムベンダー任せにすると失敗します。人事系のシステムには、必ず法律対応が発生します。故に、労働法に詳しいメンバーがプロジェクトを手動してシステム設計、導入を行う必要があります。社内に人材がいなければ、システムに精通している社労士に相談すると良いでしょう
☑ ② 業務量コントロール設計
納期・目標設定を現実的に。
「暗黙の無限業務」を排除する。
☑ ③ 健康モニタリング強化
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面談制度
-
ストレスチェック活用
-
産業医連携
☑ ④ 管理職教育
「裁量=放置」ではないことを徹底。
☑⑤ 導入目的の明確化
単なる残業代削減目的は危険。
生産性向上設計とセットで考える。
社労士としての結論
今回の見直しは、
「働かせ方改革」になるのか
「働き方改革」になるのか
その分岐点に立っています。
経済成長のアクセルを踏むのであれば、
企業はブレーキ性能も高める必要があります。なにかあったときに、国は助けてくれません。社員を守るのは経営者に求められる責任となります。
経営者の皆様へ
制度改正を待つのではなく、
-
自社は成果主義に耐えられる組織か?
-
自律人材を育てているか?
-
健康リスク管理は万全か?
を今こそ点検すべき時期です。
裁量労働制は「魔法の制度」ではありません。
設計を誤れば、企業価値毀損の火種になります。
しかし、正しく設計すれば、自走組織への転換装置にもなります。
☆御礼☆
最後までお読み頂きありがとうございます。
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