選挙後に動き出す「新しい働き方」
~ 働く自由と、守られる健康のあいだで ~
総選挙が終わり、国政はあらたな局面に入りました。
国民の選択を受け、新しい自民党体制が本格的に動き出します。
労務の分野で、いま静かに、しかし確実に注目を集めているのが、
約40年ぶりとも言われる労働基準法の大きな見直し議論です。
昨年末、国会提出が予定されながらも延期となった法令案。
表に出る機会は一度止まりましたが、
その方向性自体が消えたわけではありません。
むしろ、選挙後の政治日程の中で、再び議論が動き出す可能性があります。

「もっと働ける人には、もっと働いてもらう」という思想
今回の議論の根底にあるのは、
働きたい人が、能力を発揮し、より多く働ける社会をつくる
という考え方です。
生産性向上を掲げ、
-
リスキリングによる能力開発
-
人材の高度化
-
働く「密度」を高める工夫
こうした施策は、すでに各所で進められてきました。
しかし現場では、
「これ以上、密度を高める余地はどこにあるのか」
という声も聞こえてきます。
その延長線上で語られ始めているのが、
「働ける人には、より長く・より多く働いてもらう」
という発想です。
社労士として感じる、現場とのズレ
ここで、社労士としてどうしても感じる違和感があります。
現場にいるのは、
「もっと働きたい人」ばかりではありません。
むしろ多いのは、
生活のために、働かざるを得ない人です。
特に時給制で働く方にとっては、
働いた時間 = そのまま収入
という、非常にシンプルで、そして重たい現実があります。
忙しい時期ほど、
-
疲労に気づかない(長時間労働に対する感覚が麻痺する)
-
無理が日常になる
こうした状態に陥りやすいのも、現場ではよく見られる光景です。
「みんな働いている」が生む、見えない圧力
職場では、制度よりも空気が人を動かします。
周囲が残って働いていれば、
「自分だけ先に帰りづらい」
そう感じた経験のある方も多いでしょう。
制度上は問題がなくても、
実際には、プライベートを大切にしたい人ほど、
心理的な負担を抱えやすくなります。
これは、法律だけでは解決できない、
日本の職場文化が抱える難しさです。
昨年予定されていた労働基準法改正が示していたもの
こうした現実を背景に、昨年検討されていた労働基準法改正案では、
「働く自由の拡大」と「健康確保の強化」を同時に進める
という思想が色濃く表れていました。
主なポイントは、次のとおりです。
-
14日以上の連続勤務の禁止
4週4休の特例のもとでも可能だった長期連続勤務に、明確な上限を設ける。 -
法定休日の明確化
就業規則で、どの日を法定休日とするのかを明示する義務。 -
勤務間インターバル制度の義務化(原則11時間)
働く時間だけでなく、「休む時間」を法律で守る発想。 -
年次有給休暇の賃金算定方式の統一
複雑だった制度を整理し、分かりやすくする方向性。 -
「つながらない権利」に関するガイドライン整備
業務時間外の連絡が当たり前にならないための歯止め。 -
副業・兼業の労働時間通算ルールの見直し
多様な働き方を前提とした制度設計への転換。 -
週44時間特例の廃止
規模に関わらず、週40時間を原則とする考え方。 -
管理監督者の労働時間把握の強化
「管理職だから時間管理不要」という発想からの脱却。
これらに共通するのは、
働きやすい環境、労働時間を管理する方向性でした。
運輸業界が示してきた「守るべき線」
運輸業界では、
働きすぎが人命に直結するという理由から、
-
運転時間の上限
-
休息時間の確保
が、厳しく規制されてきました。
勤務終了後から次の勤務開始まで、
一定時間の休息を必ず確保するという考え方は、
安全を守るための「最低限の線引き」です。
この発想は、決して特定業界だけのものではありません。
これからの働き方で問われること
これからの法改正議論で本当に問われるのは、
-
どこまでを自己選択に委ねるのか
-
どこからを法律で守るのか
-
生産性向上と健康確保をどう両立させるのか
という点です。
「働く自由」を広げるだけでは、
結果として、弱い立場の人ほど無理を背負うことになります。
だからこそ、
自由と同時に、守る線を明確にすることが不可欠です。
社労士としての宣言
働き方改革は、
「働かせない改革」でも、
「働けと言う改革」でもありません。
本来は、
人が健康的に、働き続けられる社会をつくるための仕組みです。
法律が変わるとき、
制度が動くとき、
現場は必ず揺れます。
その揺れの中で、
働く人の健康と尊厳を守り、
同時に、組織が持続的に成長できる環境を整える。
私は社労士として、
人を守り、組織を守る支援を通じて、社会に貢献し続けていく
その姿勢を、これからも大切にしていきたいと思います。
☆御礼☆
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