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日航ジャンボ機(JAL)墜落事故から40年——ネジひとつの緩みが教える、安全配慮と組織の責任

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企業の安全配慮義務と危機管理の教訓

1985年8月12日、日本航空123便が群馬県御巣鷹山に墜落し、520名が犠牲となりました。
単独機の事故としては世界最多の犠牲者数を記録し、日本の航空史だけでなく、企業の安全管理史に深い爪痕を残しました。
亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りいたします。

1. ネジ(リベット)ひとつの緩みが招いた大惨事

事故原因は、7年前に行われた尾部圧力隔壁の修理不備。
本来は二重列で締めるべきネジが一列しか取り付けられず、圧力に耐えられず破断。それが最終的に墜落へとつながりました。

わずかなネジの緩み、手順の逸脱、記録の見落とし。
どれも人間の目と手で防ぐことができたはずです。
安全とは、日々の小さな確認と確実な実行の積み重ねにほかなりません。

2. 安全配慮義務の本質

労働契約法第5条は、企業に「労働者の生命・身体等の安全を確保する義務」があると定めています。
航空会社における整備や運航管理、地上業務、乗務員教育もすべて、この安全配慮義務の範囲です。

事故調査報告書によれば、この墜落は整備記録の不備、技術手順の逸脱、情報共有不足が重なった結果でした。
これは航空業界だけの問題ではなく、すべての企業、業種に共通する教訓です。

<教訓>

  • 安全管理は「形式」ではなく「実効性」が重要

  • 異常情報は隠さず共有し、是正する仕組みが必要

  • 一度の手順逸脱が、数年後に大事故へ繋がる可能性がある

3. 危機対応と組織文化

墜落後、生存者がいたにもかかわらず救助開始まで時間がかかり、「救えた命があった可能性」も指摘されています。
危機時に「最悪を想定して即行動する文化」が組織に根付いていたか、これは企業の危機管理力を測る試金石です。

<現代の企業に求められる対応>

  • 即時稼働する連絡体制

  • 現場判断を支える権限委譲

  • 想定外に備えたシナリオ訓練

4. 労務管理の視点 — 心理的安全性を阻害した構造の教訓

この事故では乗務員も犠牲となり、労災保険や遺族補償給付が支給されました。しかし、金銭的補償だけでは人命も遺族の心も救えません。労務管理の現場では、予防と同時に次の体制構築が不可欠です。

  • 安全衛生委員会による定期的なリスクレビュー

  • 異常や不具合を声に出しやすい職場風土(心理的安全性)

  • メンタルケア・家族支援体制

心理的安全性の欠如:スペースシャトル「チャレンジャー号」事故に学ぶ教訓

アメリカのスペースシャトル「チャレンジャー号」の爆発事故(1986年)は、NASA組織の文化として「技術者の懸念が上層部に伝えられなかった事実」が原因のひとつとなっています。NASA管理部門は圧力とスケジュール優先の判断により、発射を強行しました。この事件は、異常への声を上げにくい組織文化が致命的な意思決定エラーを招くという、非常に強い警鐘になっています。

企業・労務管理への活かし方

JALの事故でも同様に、「安全への懸念を言い出しにくい」雰囲気が背景にあったかもしれません。どの組織でも、以下の点が重要です。

  • 技術者や現場スタッフが上司に「異常をそのまま伝えられる空気感」

  • 経営層・労務管理部門の判断が、声を上げた者に対して支持的であること

  • 「問題提起があって当たり前」という組織文化を明確に育てること

これらはすべて「心理的安全性」の構築につながり、重大事故の予防には不可欠です。

 

5. 人材育成の視点

この事故の背景には、技術的ミスだけでなく、教育と継承の不足がありました。
人材育成とは、単に技能を伝えることではなく、「安全を最優先する価値観」を植え付けることです。

  • 正しい作業手順を守る習慣化

  • 手順の理由を理解させる教育

  • 新人とベテランが相互に学び合う仕組み

現在、JALでも当時の事故を経験した社員はほとんどいません。
そうした中で、40年を経て初めて、被害者遺族が「直接JALと話したい」という要望を実現する機会が設けられたと報道されています。

この場では、新入社員の整備士に対し、遺族の方が事故当時の思いや失われた命の重みを語りかけました。
「安全は、整備士一人ひとりの確かな仕事によって守られる」という強いメッセージは、言葉以上の重みを持って若い整備士たちに届いたはずです。

6. 40年後の今、私たちがすべきこと

御巣鷹山では今も慰霊登山が行われています。
事故は過去の出来事ではなく、未来の命を守るための警鐘です。

  • 小さな緩みを見逃さない

  • 安全を最優先する経営判断

  • 人が人を守るための教育と風土づくり

安全と品質はコストではなく投資です。
それは利益よりも優先される、企業の最重要使命です。

まとめ

圧力隔壁のネジひとつの緩みが、520名の命を奪いました。
それは「人の力で防げた事故」でもあります。

40年の節目にあたり、全ての組織が安全と命を守る仕組みを日常に根付かせることを、
リスクマネジメントの専門家であり社会保険労務士として、そして一人の人間として強く願います。

☆御礼☆

最後までお読み頂きありがとうございます。

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